お天気で困る人を一人でも減らしたい ~ユーザーの行動を変えるサービスへ~


Profile
ライフ・エンターテイメント・スポーツ事業本部
小池 佳奈

大学時代環境分野を学び、大学院1年の時に気象予報士の資格を取得。
当社では気象予報士の知識や実務経験を生かしたサービス企画を主に担当。

「人の命を助けたい」が気象予報士へのきっかけ

私は「人の命を助けたい」という気持ちを強く持ったことをきっかけに、現在は気象予報士の資格を生かして 、お天気情報サービスの企画をしています。

「人の命を助ける」を実現するために、健康 に影響を及ぼすような環境汚染や、人の命を奪ってしまう気象災害などを幅広く学べる環境系の学部に進学し、特に気象学に興味を持ちました。
科学や技術は日々進歩し、気象予測の精度も上がっているにもかかわらず、毎年気象災害で亡くなる方は後を絶たない現実があります。
そこに対して貢献していきたいという思いが強くなり、大学院に進んだ際に気象予報士の資格を取得しました。

現在、気象観測技術やスーパーコンピューター等の計算資源の発展に伴い、気象情報の予測精度も向上しているものの、 その高い精度の情報 がユーザーの行動に十分につながっていないと考えています。

例えば、台風や大雨で川が増水しているにも関わらず、川沿いや 田んぼの様子を見に行って流されてしまう人が居らっしゃいます。それはテレビやラジオなどのお天気情報だけでは、自分の今いる場所にどれくらい自然災害の危機が迫っているのか伝わりきらず、危険から逃げるという行動につながっていないのが課題だと感じています。

ユーザーの行動を変えるお天気情報へ

ユーザーに伝わる情報を届けるチャレンジとして、現在 日本に6基しか設置されていない最新の気象レーダである「フェーズドアレイ気象レーダ」の観測情報を搭載した天気情報サービス『3D雨雲ウォッチ』のサービス運営を行っています。

世界最先端の気象レーダの情報を搭載していることはもちろん、これまで幅広い年代やユーザー層に向けてサービスを展開してきたエムティーアイのサービスづくりのノウハウ を生かして ユーザーに情報が伝わりやすい見せ方や伝え方の部分で、これまでのお天気情報の一歩先をいくサービスの提供を目指しています。

平面の雨雲レーダや「○ミリの雨が近づいています」といった注意喚起を文字で伝えても、自分事としてその危険を素早く理解し、行動に移す事ができるユーザーはまだまだ少ないと感じています。
このため、3D雨雲ウォッチでは、危険を疑似体験できるような3Dグラフィックで雨雲を描画することで、自分が今いる場所に「本当に危険が迫っている」という事を実感 して頂き、身を守るための回避行動に移すことができるユーザーを1人でも増やしたいという思いで取り組んでいます。

より早く危険を知らせることができる体制に

エムティーアイは2017年に気象庁の予報業務認可を受け、予測が自社でも可能になったことにより、理化学研究所や 情報通信研究機構などの研究機関等から受けたデータを分析することで 、リアルタイムに予測を出すことが可能になりました。

今までの気象レーダでは、積乱雲の全貌を捉えるには少なくとも5分はかかっていました。しかし、ゲリラ豪雨をもたらすような積乱雲の状況は数分で状況が変わるので、どうしても全貌を捉えてユーザーに届くまでにタイムラグができてしまう為、よりリアルな情報を届けることが難しい状況でした。
しかし、フェーズドアレイ気象レーダを活用して30秒で雨雲の全貌を観測する事 で、いち早くゲリラ豪雨の卵を検知し、80%以上の的中率でゲリラ豪雨の予測をユーザーにお届けできるようになりました。

夏になると、川遊びなどのレジャーの場面で河川の増水で溺れる事故が発生してしまうことがあります。
遊んでいるその場は晴れていても川上で積乱雲が発生し、大雨が降ることで急激に河川が増水し、気づいたときには身動きが取れなくなってしまったと いうニュースを見聞きします。
そのような事故の発生時は、「あと3分でも 早く予測情報の提供ができれば、ユーザーが川遊びを切り上げて避難するなどの行動が取れて被害に合わずに済んだのではないか」と悔しい気持ちになります。
「あと3分早く 情報が伝わっていたら…」という状況を少しでも改善していき、日常生活はもちろん、レジャーの場面でも自然災害で被害に遭われる人 を減らして いきたいと考えています。

2018年梅雨~夏のお天気の傾向・注意

今年2018年の梅雨から夏にかけて の降水量は、気象庁から西~東日本では平年並で、北に向かうほど多くなると 予測が出されています。
降水量は平年並みとはいえ、ゲリラ豪雨に関しては都心部の方がより降りやすく、その発生回数は毎年増えています。

出典:気象庁ホームページ

http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html

上記の表を見てもわかる通り右肩上がりの傾向は続いていますので、2018年に限らず、今後ゲリラ豪雨に遭遇される方が増えることが予想されます。
これからも引き続きユーザーが自らの安全を守る行動を取ることができるような気象情報サービスの提供をしていきたいと思っています。

サービス情報
3D雨雲ウォッチ~フェーズドアレイレーダ ~
※現在、関東・関西の一部地域で実証実験を行っています。
http://www.mti.co.jp/?p=21852

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